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1 post from November 2005

November 15, 2005

地方自治制度の多様性

 地方自治とは多様なものである。それは、地域の歴史や伝統そして文化的な蓄積の中から生まれるものだからである。したがって、地方自治制度も国によって多種多様なものがある。今回はその一端を紹介することによって、地方自治は日本のように厳格にかつ一元的に規制されるものではなく、もっと多様で多彩なものがあっても良い、ということを示してみたい。

統治制度の多様性

 地方自治の統治制度は、国によって多彩な様相を示している。日本の場合は、全国で一律に規定されており、首長と議員が直接住民の投票によって選ばれる二元代表性である。しかし、世界には様々な方法論が存在している。
 一元代表制 ・・・議長が首長を兼務し、行政を指導する。
 変形一元代表制・・議長が首長を兼務し、行政は与野党の幹部議員が指導する。
 変形一元代表制・・同右で、与党の幹部議員が行政を指導する。
 変形一元代表制・・議長が首長を兼務し、行政は「執行官」に委任する。
 二元代表制 ・・・議会と首長と別れて、立法と行政が分離される。
 変形二元代表制・・議員と首長が選挙で選ばれるが、首長は名誉職にとどまる。
 これらの制度が、一国の中に混在するのがむしろ通例である。連邦制を採用している英国、米国、ドイツなどは、州によって全く別個に地方自治制度が規定されている。

議員の兼職

 日本では、議員の兼職(他の議会の議員や首長)は厳格に禁止されている。もし、区議会議員が都議会議員選挙に立候補したら、その時点で区議会議員を辞職したものとみなされる。これが日本では当たり前だが、欧州ではあまり当たり前ではない。むしろ、兼職が当たり前である。
 お隣の台湾では、台北市長は中央政府の閣僚である。それだけ首都は重要だということだろう。フランスでは、市長が県議会議員を兼職することがある(それぞれ立候補する)。ポーランドのワルシャワ市では、区議会議員の中から、ワルシャワ中央市議会議員を選出する。このように、さすがに、兼職といっても、A市とB市の市議会議員を兼ねる、という意味ではなく、日本で言えば、市議会議員と県議会議員を兼ねる、というイメージだ。この兼職の意味は、上位団体との連携を議員・議会ベースで実践していこうということである。議会を中心に地方自治が進められる欧州ならではの議員の兼職である。

検事・警察官の選挙

 特に、米国の地方自治体のように、司法権を持つ検事や、警察権を持つ保安官などを住民の選挙で選ぶ場合がある。日本では、考えられないことだが、検事も選挙活動を行うのである。この狙いは、とかく住民の視点を忘れがちな司法というものを、常に住民の視点から行わせようとする知恵から生まれたものだ。もちろん、弊害が無いわけではない。選挙である限り、人気投票という側面は否めないし、十分な法律的・専門的知識を持った者が当選するわけでもないからだ。
日本でこうした法律の専門家を選挙で選ぶことについては抵抗感が強いだろう。しかし、逆に、こうした司法といった人を裁く場所に、法律の専門家(東大法学部を優秀な成績で卒業して世界を知らない人)に全てを委ねて良いのかという疑問も起こる。大切なことは、こうした米国の試みは、選挙を通じて民意を反映するという民主主義の基本を、試行錯誤を繰り返すことによって体現しようとしていることだ。

職員採用の多様性

 オーストラリアのように、もともと地方公務員法というものが存在しない国がある。したがって、採用試験も、日本のように定期的にあるのではなく、不定期に行われる。仮に市の課長が退職した場合、課長職のポストで採用試験が行われる。したがって、係長が昇進したい場合には、その課長職の採用試験を受けなおすのだ。日本のように年功序列でもなく、一生公務員をやるわけでもない国柄の反映だ。
 日本のように、公務員が一生一つの自治体で勤め上げるという感覚の国はどうも少数派だ。自治体の職員が一生その自治体で生活することも悪くはないだろうが、どうしても柔軟性を欠き、発想の貧困や視野の狭さを生む。日本での公務員制度改革論議の中核は実はこの部分であろう。

おわりに

 このように、地方自治というものは、多様で多元的なものである、ということをまず認識することが大切だ。むしろ、日本の地方自治制度は硬く規定されすぎていると言える。日本では地方自治の多様性や多元性を許容しない憲法と地方自治法になっている。しかし、地方自治が多様で多元的なものであることは、その国がより民主的であるという証明にもなるものだ。そして、多様で多元的な社会の方が、一元的な社会よりも活力を生み出すものだ。したがって、地方公務員制度改革も、こうした地方自治を多様で多元的なものにしていくとの観点から議論されていくことが望まれる。

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