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February 23, 2008

シリーズ渡辺秀子・高姉弟事件 9

再会を求めて

 渡辺秀子さんの妹で高敬美・剛の叔母である鳥海冏子さんが、唯一の彼らの親族である。鳥海冏子さんは、帯広に住み、三人の帰国と再会を心待ちにしている。
 しかし、彼女にはある心のわだかまりがあった。
 「私の姉の夫である高大基は、北朝鮮の工作員だった。もしかすると他の人を拉致した犯人かもしれない。そんな人の義理とはいえ妹が、拉致被害者の家族の人に会えることはできない」
 この心のわだかまりは、特定失踪者問題調査会に届出て、刑事告訴をした後にも残ったままだった。
 2007年4月に一気に物事が動き、高敬美・剛の事件が警察当局によって拉致被害者として断定された。拉致被害者の親族である限り、拉致被害者家族連絡会(家族会)に入って、一緒に活動していくのが筋だろう。しかし、鳥海冏子さんにとっては、そのわだかまりがある限り、家族会への門を叩くことには逡巡していたのであった。
 2007年4月20日、東京に出て、内閣府や拉致議連への要請を機に、家族会の代表である横田ご夫妻と面会した。
 私は「今の気持ちのすべてをご夫妻にお話してみてください」とだけ伝え、鳥海冏子さんと横田ご夫妻だけの短い会談をセットした。
 たった10分程度の面会時間だったが、終わったあとの鳥海冏子さんの表情は、これまでとは違うものだった。
 その後の記者会見で、横田ご夫妻との面会時の感想を尋ねられた時、鳥海冏子さんは「私のわだかまりの全てを聞いてもらいました。横田さんからは、皆な色々な事情を抱えているのだから、大丈夫ですよ。一緒に頑張りましょう、と声をかけられました」と答えた。鳥海冏子さんは、横田ご夫妻から、この一言を聞くために北海道から上京したといってもよい。救われなくてはならない人から、救われたのだった。
 北朝鮮金正日政権による拉致という国家犯罪は、犯罪被害者の家族までも、加害者の意識をもたせるものなのであろうか。あるいは、加害者だと思われる人物も、あるいは被害者ではないのだろうか。加害者の立場に立つ高大基も、実は金正日政権の犯罪による被害者でもある。拉致という犯罪での加害者・被害者という区分は、金正日の犯罪の前では意味をなさないのである。

追記:今回をもちまして、「シリーズ:渡辺秀子、高姉弟事件」をとりあえず、終了します。お読みいただきありがとうございました。