Andy Changの論評 (2008/12/17)
[AC通信:No.260][AC論説] No. 260 馬英九の真骨頂
「群盲象を撫でる」と言う言葉があるが、台湾の実情はまさにその通りで、メディアの報道は当てにならない。外国人の報道、評論は台湾メデイアの受け売りだからもっと当てにならない。台湾に帰って自分で見てきた人の話とは大いに違う。特に違和感を覚えるのは馬英九の印象である。
私の見聞したところ台湾は確実かつ急速に人権を喪失し、独裁化が進んでいるようである。中国人の陰険な策謀で、中国と台湾が同じ程度の独裁国家になれば簡単に統一できると言うことである。
●台湾の強みは民主国家だった
台湾は独立した民主国家というのが中国の覇権に対する強みだった。民主国家が独裁国家に併呑されれば大きな人権問題となるはず、中国は武力侵攻することが出来ないと言われて来た。実情はあまり民主でなくても、台湾は民主国家という看板を下ろすことはなかったのである。
ところが馬英九政権になると民主、人権は抑圧され、国民党メディアは人権弾圧を報道しない、だから外国は台湾の実情を知ることが出来ない。民間でも実際に起きた人権蹂躙は民間の噂だけで、多くの民衆もメディアのウソに騙されている。いまの台湾では真実を報道することすら許されないのが実情である。
同じ時期に中国では民主運動が起きて、12月10日に「08憲章」を発表し、多くの人がサインしたが、次の日には民主運動家の劉曉波が08憲章にサインしたため逮捕された。張祖樺も逮捕されたが翌日釈放された。
08憲章の内容を見ると、自由、民主、平等、共和、憲政などを主張し、更に憲法改正、権力分立、立法民主、司法独立など、15項目からなる基本主張を宣言したもので、台湾人民が国民党政権に抗議しているものとソックリなのである。つまり、それだけ台湾の民主が後退したと言うことだ。
民主国家を宣伝していた台湾で、国民党が政権を奪回すると半年で台湾人に対する大弾圧が起こり、陳水扁を始め多くの台湾人が逮捕された。立法、司法、警察などの独裁が進み、中国の人権蹂躪、覇権と同じような国になった。中国で民主化運動が起きているのに、台湾は独裁となり、両方が「歩み寄って」独裁国家となれば中国人の台湾併呑に抗議できない恐れがある。
●馬英九は無能か?
馬英九は無能だと言われている。突っ込んだ質問に対する反応はかなり鈍く、政治能力がないと一般に知られている。しかし国民党の長老、主流派が政策を表に立てて施行しているのは確かだが、国民党の主流派と対立しているのではなく、一致していることに注意しなければならない。連戦は長老だが能力のない人間と言われている。国民党の内部ではいろいろ違った意見があるが中国接近に反対するものはいない。
馬英九は台湾の中華民国と中国の中華人民共和国が香港形式の一国二制度を実施することを望んでいる。しかし中国は中華民国政権には反対である。しかし国際状況から見て中国側が一時期でも馬英九の一国二制度を受け入れる可能性はまだある。
馬英九の真骨頂は誰も理解していないように思える。馬英九には表と裏があり、政策は他人任せで他人の責任にしているが、蔭の馬英九はかなりの影響力を行使していると思える。例えば陳水扁や丘義仁などの逮捕や釈放について司法部では検察官と裁判官の間に違いが見られるが、馬英九の蔭で強大な圧力を加えたと言われている。
陳雲林を招いて四つの商業協定を結んだが、反対や抗議に対し馬英九は弁明もせず、協定は違法であると指摘されても沈黙を守り、そのうちに協定が実施されてしまった。これを見れば馬英九は人民の抗議や、米国の抗議は完全に無視して強引に政策を実施している。中国とまったく同じで人民の抗議や反対など完全無視である。
馬英九が無能といわれても独裁化がどんどん進んでいくのだから、実際には馬英九の陰険な皇帝ぶりに注意すべきなのだ。皇帝が英明である必要はなく、皇帝の権力は絶大なのだ。
●金溥聡はなぜ香港にいるのか
中国接近が進んで商業と政治の一体化が進めば統一など討論する必要はなく、数年で実際に統一してしまう可能性が強い。台湾の国民党が中国の圧力に屈服すれば彼らの立場はなくなる。だから国民党の主流派も一国二制度に半分期待していると見るべきだろう。
馬英九の蔭武者といわれる金溥聡が台湾から姿を消して、香港で教鞭を取っていることに注意した人は少ない。馬英九の影武者が香港で中国とどのような交渉をしているか誰も実態を知らないのらしい。馬英九の一国二制度は香港で秘密裏に交渉されているのではないか。香港は中国の窓口である。香港でどんな秘密交渉がさえているのか誰も知らないし、メディアも報道もない。
国民党と中国の交渉は連戦と江丙坤の二人を主体として行っている。だが金溥聡は馬英九の影武者である。つまり国民党が北京で胡錦濤と連絡を取っている間に、馬英九は別の路線で香港経由の交渉を行っているのかもしれないと言うことである。
●中国には台湾政策がある
中国の陳雲林が台湾を訪問し、台湾人の危機感が高まって50万人と言われる大デモンストレーションが起きた。台湾人が大規模な反対運動を起したので中国も恐れをなして統一は棚上げにされたと言う人が出てきた。中国には確たる台湾政策はないと報道した人もいる。だが本当にそうだろうか?
台湾人のデモンストレーションが起きても陳雲林が馬英九政権とサインした4協定は既に発効し、旅客機の発着、船舶の直航なども現実となった。台湾人が得意になっているうちに統一へ向けて一歩前進となった。これを見れば中国と馬英九政権には少しずつ進展があり、人民の抗議に影響されていないことがわかる。
●オバマの密使
陳水扁が収監され、手錠をかけられたニュースは世界中で人権問題として報道された。つづいて元行政院副院長の丘義仁が収監され、有罪判決をうけた罪人でもないのに、彼の人権を無視して丸坊主にされた写真は、台湾の人権蹂躪がこれほど残酷かを示すものだった。
民衆はなす術を知らない。メディアの報道は陳水扁が「汚職まみれ、違法、公金横領」と断罪しているので、民衆は司法が無補、横暴であると知りながら司法の裁判を待っている。これはおかしな話で、既に司法が無法横暴であると知っていながら司法に公平、正義を期待するのは愚劣である。
数日前にアメリカ大統領に当選したオバマが台湾に密使を送って馬英九と会談し、台湾の人権無視について警告を発したと言う噂が流れた。アメリカは中華民国の官僚と直接交渉することは禁止されているが、密使を送ることは出来る。密使は人権問題について馬英九に厳重な警告をしたと言われるが確認は出来ない。
数日後に台湾のメディアは、アメリカのニューヨーク大学のジェローム・コーエン(Jerome Cohen)教授が馬英九を訪問し、「台湾の検察官と法官の独立性に対し、安心した」と伝えたと報道された。コーエン教授は馬英九がハーバードに留学していた時代の教授である。
しかし、コーエン教授がわざわざ台湾にやって来て「台湾の司法検察の独立性に安心しました」という必要があるだろうか。メディアはアメリカの警告を書かずウソの報道をしている。コーエン教授がオバマの密使だった可能性は高いが誰も真実を知らない。わかっているのは馬英九がアメリカの「警告」をも無視して検察官に陳水扁の釈放に異議申し立てをさせたことだ。
●馬英九の真骨頂
いま日本で評判になっている大河ドラマ、「篤姫」のなかで徳川家定はバカを装った賢い男だったとされている。皇帝がバカでも国の政治は成り立つのである。馬英九は皇帝を気取っていると宮崎正弘氏は書いたが、おそらくこれは真実だろう。
馬英九には以下のような五つの面があると思う:
(1)彼は皇帝になったと思っている。皇帝となれば「下賎の者」の評判や抗議は気にしない。責任を負う必要はない。皇帝は無謬、至上である。
(2)国民党では内部の意見が分裂して馬英九は彼らの言いなりになっているというが、実際に馬英九と国民党は裏で密接に繋がっている。
(3)中国問題では連戦と江丙坤を主体とするグループに任せている。
(4)しかし彼自身は金溥聡を香港に配置して独自の外交を行っている。
(5)内政問題は行政院長、司法問題は司法部長に任せ、経済は経済部長に任せているように見せかけているが、実際は彼らを蔭で操っている。
馬英九は中国人である。中国人は誰でも陰険で残忍な性格をもっている。このことを忘れてはならない。
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