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1 post from August 2010

August 09, 2010

高齢者行方不明事件とプライバシーの保護

 このところ、毎日のように報道されている高齢者の行方不明事件である。石原都知事は行方不明になった高齢者を「幽霊」と呼んで、「親の面倒をみない子どもはけしからん」と、いつものようにコメントしていた。「子ども」といっても、70歳とか80歳にもなる高齢者だから、その人たちを批判してもしかたないだろう。
 この問題は、現代社会の暗部を浮き彫りにした。暗部とは「失踪者」あるいは「行方不明者」が、現代社会に溢れているという事実である。
 今回の事件は、100歳を超える高齢者の「行方不明」ということで、注目を浴びているのだが、それ以外でも、「失踪者」や「行方不明者」が溢れているという事実には、あまり注目されていない。
 警察庁は毎年、家族から届け出のあった「行方不明者数」を公表している。その数は、毎年10万人である。その多くは、数年のうちに「解決」するのだが、毎年1000件ぐらいは「未解決」のままになる。家族としても、警察に届け出るのが精一杯で、自分たちで行方不明者を探し出すというのは、気の遠くなるような作業で、家族として他にできることは、せいぜい探偵社に依頼するぐらいである。それも結構な金額がかかる。
 今回の事件で、自治体が高齢者の所在確認を怠っていた、自治体内部での情報交換を怠っていたと批判が起こっている。それはその通りなのだが、なぜ、所在確認と情報交換を怠っていたのか、という点が追究されていない。その根本的原因は「プライバシーの保護」あるいは「個人情報保護」という名目による法規制と自主規制である。「失踪者」あるいは「行方不明者」の所在確認のためには、ある程度の「プライバシーの侵害」がなければ不可能である。さらに、「個人情報保護法」の適用外にしなければ、行政内部でも個人情報の交換ができなくなっているのである。
 今回明らかになった高齢者行方不明事件とは、「プライバシーの保護」というものがあまりにも強すぎて、かえってこうした社会問題を発生させているという皮肉な現象なのである。
 今回の事件では、民生委員が高齢者の所在確認をするのが通例の方法だが、それでも「プライバシーの保護」を盾にして、家族構成の開示を拒否している家族に対しては、何も手を出せないのである。
 消防署の職員でさえ、緊急時の保護のために家庭訪問をしても、「プライバシーの保護」を理由にして、家族構成の開示を拒否されている。自治体ですら、消防署に住民票などの個人情報を提供することは「目的外使用」ということで拒否している。
 学校でも「プライバシーの保護」を名目にして、子どもの名簿も保護者の連絡先もクローズしてしまい、親同士の連絡すらままならないという実にあほらしい実態が蔓延しているのである。
 要は、「プライバシーの保護」という観念に、日本国民がみんな金縛りにあっているようなものである。金縛りだから、誰も「失踪者」や「行方不明者」の所在確認に手を出せないのである。
 もうそろそろ、行き過ぎた「プライバシーの保護」という観念を絶対視することから、私たちは脱却すべきではないか。「プライバシーの保護」を絶対視すると、かえって個人の人権を保護できないことがあるということを考えるべきだろう。「羹に懲りて膾を吹く」という状況では、高齢者の行方不明問題は解決できない。

 

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